2016/06/05

新しい道徳


北野武 著
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副題は「いいことをすると気持ちがいいのはなぜか」。

"道徳の与えたる恩恵は時間と労力との節約である。
道徳の与えたる損害は完全なる良心の麻痺である。"

芥川龍之介「侏儒の言葉」からの抜粋がこの本の冒頭に書かれています。
そして北野武本人も

"道徳がどうのこうのという人間は、信用しちゃいけない。"

と最初っからぶっちゃけてしまってます。
いきなり結論ありきから始まるので
後は読む必要が無いんじゃないかと思ってしまいますが
近年の日本の道徳教育について色々と細かに指摘しています。

個人的には「動物を殺して食べることについて」は
以前から少し興味を持っていたテーマではありました。
あるテレビ番組で学生に鶏の世話をさせ最終的に自分たちで殺して食べるという
ドキュメンタリーが放送されていたのを観たということもあるし
また漫画「銀の匙」を読んでいるというのもあります。

仕方ないと割り切る学生
大泣きしながら鶏を殺す学生
そもそもそんなことは出来ない学生
その後調理された鶏肉に手を付けない学生
たんたんと食べる学生

色々な学生がいましたが
最終的には食べ物のありがたみを感じた学生が多かったように感じました。
確かに一歩間違えればトラウマ級の出来事だとは思うけれど
「食べ物を粗末にしない」とあれだけ道徳を持ち出して言うのならば
その食べ物がどうやって供給されているのかを教えるべき。
都合の悪い所は隠して表面だけを見せても説得力が無いように思います。

でも多分それも大人の立場からの考えであって
学生からすれば「そんなえげつない場面は見せてくれるなよ」とか
「肉が食べれなくなっちゃったじゃないか」と文句が出てもおかしくない。
自分が学生の頃にそういった体験をすればどうなったのかとよく考えます。
平気で肉を食べてるのか。
ベジタリアンになってるのか。
未だに答えの出ない難しい問題です。


北野武の本は以前から何冊か読んでいるので全体を通しては
「あの人ならそう言うだろうな」といった感じがして
昔から一貫して物事の考え方が変わっていないなと思いました。
説教臭くなりがちなこの手の本も
語る人が信用に足る人ならばすんなりと聞くことが出来る。
結局はそう言うことなんだろうと思います。

道徳という言葉が胡散臭く感じてしまいそうな一冊。。